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ワクチン開発に向けたマラリア原虫-宿主間“鬩ぎ合い”メカニズムの解明

世界最大の感染症の一つであるマラリアは、年間の罹患者数3~5億人、死亡者数は約100万人にもおよびます。つまり約30秒に1人がマラリアで亡くなっており、その死亡者のほとんどはアフリカなど開発途上国の5歳以下の子供です。そのため効果的な対策として、マラリアワクチンの開発に期待が寄せられていますが、残念ながら未だ有効な感染防御ワクチンは開発されていません。これはマラリア原虫が防御免疫の標的部位を多様に変化させることが大きな要因だとされており、そのために次世代のワクチン開発には、細胞性免疫の活性化を含めた多方面からの検討が必要であると考えられています。そこで私たちは、マラリア原虫と宿主の“最も激しい攻防”が起きていると推測される肝臓感染ステージに着目し、多様な原虫変異株を用いて宿主応答を比較することで、細胞性免疫応答や様々な応答メカニズムなどを明らかにしようとしています。宿主と原虫を隔てる“最前線”の膜である寄生胞膜(PVM)に着目し、宿主肝細胞の原虫感染による変化やPVMに対する宿主応答を明らかにすることで、マラリア原虫による“宿作り”機構の解明を試みています。これまでの我々の研究から、肝内型マラリア原虫に対して感染初期にのみ宿主オートファジー(Atg)の応答があり、またその応答はPVMに依存する事が明らかとなりました。この現象が①マラリア原虫による宿主ハイジャック応答なのか、②宿主による原虫排除ディフェンス応答なのかを明らかにする実験を進めています。このような“鬩ぎ合い”メカニズムを一つずつ明らかにすることで、次世代のワクチン開発に応用できる情報を得ようとしています。またこのようなメカニズムを解明することで、“休眠期”マラリア原虫への応用や、他の細胞内感染病原体への応用なども期待されます。(写真:宿主肝臓内で宿主の“縛り”にあうマラリア原虫(緑色))