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研究内容

マダニよる宿主認識と病原体伝播メカニズムの解明

日本紅斑熱やライム病を媒介するマダニは、物理的および化学的刺激によって我々ヒトを認識していると考えられます。マダニが宿主となる動物からの血液獲得を目的として積極的に宿主に接近し吸血する「アトラクション行動」と、吸血後にマダニが自ら宿主から離脱・逃避する「リパルジョン行動」の宿主への接近・吸血・血液消化吸収・逃避を含む一連の行動に着目して、研究を進めています。触覚および複眼・単眼を失っているマダニ種では、蚊やハエと比較して、その標的認識メカニズムは独自に進化して作り上げられたと考えています。ウイルスからリケッチア、寄生虫まで多様な病原体を媒介し、吸血性節足動物の中でも最も広い媒介病原体スペクトルを有するマダニに備わる吸血行動の仕組みを解明することにより、新しいベクターコントロール法開発の基盤形成を目指しています。
マダニ媒介性感染症を引き起こす病原体の多くは、高度に発達した生活環と、宿主(マダニおよび動物)の防御機構の監視から逃れるシステムを発達させており、その根絶は困難を極めます。マダニ媒介性感染症の有効な制御には、マダニ側からの対策も重要な鍵と考え、マダニと病原体の相互関係の解明にも取り組んでいます。2013年、マダニ媒介性ウイルスによって引き起こされる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の流行が日本において確認され、問題視されました。本講座では、SFTS患者発生地域をモデル地域とし、定期的に定点におけるマダニのSFTSウイルス保有率を調査することで、マダニの生活環の中でウイルスがどのように振る舞い、維持・拡散していくのか、その全容を明らかにすることを目指しています。