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研究内容

トキソプラズマ活動期虫体検出方法の開発

トキソプラズマ感染症は、Toxoplasma gondiiという原虫に感染することによって成立します。通常、健常人は、トキソプラズマに感染しても無症状であるか、あっても軽微な発熱とリンパ節炎に止どまると考えられています。ただし、トキソプラズマは一度感染すると、筋肉などの組織でブラディゾイト(休眠期の虫体)を形成し、以降慢性的な感染が持続します。AIDS患者や免疫抑制患者では、過去に感染したトキソプラズマが再燃し、ときに致死的となる脳炎や肺炎、網膜炎を引き起こします。また、妊娠中のトキソプラズマ初感染は、胎児の先天性トキソプラズマ症の契機となります。
 活動性トキソプラズマ症の診断に有用であるダイテスト(色素試験)は、1948年にSabin-Feldmanによって開発され、世界各地で行われてきた検査法です。現在でも臨床検査や、新たな検査の性能評価のために用いられています。ただし、生きたタキゾイトを直接用いる必要があり、さらに結果の評価には熟練したスキルを要するため、検査可能な施設は限られているのが現状です。当講座では、初代小林昭夫教授の時代から、依頼を受けてダイテストを行っておりましたが、専門家の退任に伴い2011年3月をもって受付を中止しておりました。その後、日本で唯一ダイテストが可能であった他の施設でも検査が中止となり、国内でダイテストを扱う施設はなくなりました。
 臨床の現場では、移植医療や免疫抑制療法を行う件数は増加しており、前述のようなトキソプラズマ感染症のリスクを抱えた患者は、今後も増えることが予想されます。しかし、現在保険診療で行われている検査方法では、活動性感染の検出力が不十分であり、治療判断を強いられる状況で、診断に苦慮する事態も起きております。このような状況を踏まえ、当講座では2015年度よりダイテストを再開しました。さらに蛍光標識を用いた改良ダイテストを作成し、より簡便で迅速に結果が判定可能な検査方法の確立を目指します。