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研究内容

ヤブカの性特異的な行動を支える遺伝プログラムと神経回路の解明

様々な病原体は蚊の吸血によってヒトへと感染します。どのようにしてヒトを見つけ、近づき、血を吸うのでしょうか?蚊の吸血行動を制御する遺伝子や神経回路を理解することは、デング熱やジカ熱などの蚊媒介性感染症から身を守る上で重要となります。
 しかしながら、蚊の吸血行動は複数のステップから構成されているため、それぞれを制御する遺伝的メカニズムや神経基盤を個別に解明することで吸血神経回路の全貌を明らかにしようとすると、多大な時間が必要とされます。そこで、私たちは蚊の吸血行動がメスにしか見られない、性特異的な行動であることに着目しています。行動の雌雄差を制御する神経回路は、吸血行動のそれぞれのステップを制御する神経回路の全てに関わっていると予想できます。これを明らかにすることで、吸血行動の制御機構の様々な側面が一度に見えてくると期待しています。
 性特異的な行動は求愛行動など様々な生物種で見られ、マウスやショウジョウバエなどモデル生物ではその行動の雌雄差を制御する遺伝プログラムや神経基盤が明らかにされています。私たちはこれまでのモデル生物を用いた研究に基づき、性特異的行動のひとつである蚊の吸血行動の遺伝的メカニズムと神経基盤の解明に向けた研究を行っています。蚊のような非モデル生物の遺伝子操作はこれまで困難でしたが、最近のCRISPR/Cas9などの技術の発達により、蚊でもゲノム編集が可能となりました。私たちは蚊の性特異的行動を制御できるようなトランスジェニック蚊やミュータント蚊を作製し、それを解析することでメスに特異的な吸血制御メカニズムを明らかにすることを目指しています。得られた知見をもとに、蚊媒介性感染症からのリスクを低減させることを目的とした、トランスジェニック蚊を用いた蚊の人為的な制御を提案します。
※図はクリックすると拡大します。