• TOP
  • 研究内容
  • マラリア感染時の宿主血中アミノ酸インフォマティクス

研究内容

マラリア感染時の宿主血中アミノ酸インフォマティクス

  年間100万人以上の死者を出し続けている血液寄生性のマラリア原虫は、寄生部位である血中赤血球内において分裂・増殖を繰り返しますが、これにあたり周囲の環境から様々な栄養素を取り込んでいます。そして栄養素の一つであるアミノ酸について、マラリア原虫は複数のアミノ酸の合成経路を欠いていてことやアミノ酸源を宿主のヘモグロビンおよび血漿中アミノ酸に依存していることなどから、宿主血漿中のアミノ酸が血液寄生性原虫の寄生成立にあたり重要な役割を果たしていると考えられています。
 私達はこれまでの研究から、網羅的な宿主血漿中アミノ酸パターンの解析(アミノグラム解析)を実施することによって、齧歯類特異的マラリア原虫(Plasmodium berghei)感染が各種血漿中遊離アミノ酸の濃度を劇的に変動させることを見出しています。これらアミノ酸群の代謝合成経路は非常に複雑な栄養ネットワークとして構成されているため、この結果から相互に関連するアミノ酸多変量が感染症の過程を定義する可能性が示唆されました。さらに、この宿主血漿中アミノグラムは、摂取する餌のアミノ酸成分と強い相互作用を持っていることから、そのバランスを変化させた餌を給餌することにより人為的な調整が可能です。そこで、特定のアミノ酸配合率を有する人工合成餌を給餌したマウスにマラリア原虫を感染させ、マラリア原虫の増殖を強く抑制しうるアミノ酸配合バランスを探索しています。近年のバイオインフォマティクスの流れは、遺伝子の解析(ゲノミクス)から蛋白質の解析と機能の把握(プロテオミクス)、そして代謝物の解析(メタボロミクス)へと発展しています。本研究は、齧歯類マラリア原虫感染モデルを中心に、網羅的な宿主血中遊離アミノ酸情報(アミノ酸インフォマティクス)を解析パラメータとすることによって病原体-宿主間の新しい相互作用の解明を世界に先駆けて試みています。