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等温遺伝子増幅法によるマラリア媒介蚊の殺虫剤耐性変異の検出

  蚊は、マラリアや、デング熱、日本脳炎や糸状虫症などの感染症の最も重要な媒介者として知られています。近年のグローバル化によって、病原体を運ぶ蚊が本来の飛翔・移動の力を超え、国をまたいで移動をする懸念が大きくなっており、水際での侵入防除対策が極めて重要となっています。
   昆虫神経系の電位依存性ナトリウムチャンネルにおいて、 kdr 変異( pyrethroid knockdown resistance :ロイシンからフェニルアラニンへの置換)がピレスロイド殺虫剤耐性付与に特に重要であることが知られています。アフリカ地域でのマラリア媒介蚊である Anopheles 属の蚊は、 kdr 遺伝子の遺伝子型について、野生型もしくは西アフリカタイプ kdr 変異型のどちらかを持っています。この西アフリカ型 kdr 変異は、ある一塩基置換により引き起こされます。そこで私達は、単一温度遺伝子増幅法を応用し、殺虫剤耐性に関わる一塩基置換を迅速・簡便に検出する「部位特異的 LAMP 法( AS-LAMP 法)」の開発をおこなっています。 一塩基置換を検出するAS-LAMP法は、従来のLAMP法の高い特異性によって、近似する塩基配列を持つ遺伝子の中から標的遺伝子のみを増幅する方法です。また、その増幅反応特性から、複製するたびに表裏両方の変異箇所をチェックし、一塩基レベルの違いを厳密に区別するため、増幅の有無だけで一塩基置換判別がワンステップで可能です。試料として、熱帯熱マラリア原虫を媒介するハマダラカを用いています。私達は、ブルキナファソ国立マラリア研究・研修センターとの共同研究により、ハマダラカ(Anopheles gambiaeおよびAnopheles funestus)の定点採集をおこない、AS-LAMP法の最適化をおこなっています。これまで、AS-LAMP法によってこれらのハマダラカのkdr変異の解析を実施したところ、3地点において10-26%の蚊が殺虫剤耐性となっていることが明らかとなっています。このような方法の開発を進めることにより、PCR機器などの高度な設備がない現場でも、迅速に検査結果を得られるようになることが期待されます。(写真:西アフリカ・ブルキナファソで採集されたハマダラカ)