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研究内容

蚊の吸血宿主馴化・学習メカニズムの解明

蚊が吸血する動物は、人間だけでなく、牛や馬などの家畜、カエルなどの両生類や昆虫にまで及びます。このように蚊が多様な動物を吸血する結果、病原体の伝播は、同じ動物種内のみならず異なる動物種間でもおこなわれます。また、蚊は吸血対象を選り好みし、その選好性には種差や個体差があることが知られています。普段は動物を吸血している蚊が人間を吸血することにより生じる突発的なアウトブレイクが疫学的に示唆されており、蚊の宿主選好性における短期的な変化と感染拡大の関連が予想されます。
 蚊は、動物の呼気中に含まれる二酸化炭素や、においに含まれる化学物質を感知することで、吸血宿主を認識することが明らかになりつつあります。しかし、蚊がある標的(動物)を吸血するかどうかを決定する仕組み、吸血対象を選択するアルゴリズムとその基盤になる分子メカニズムなど、解明されていないことが多く残されています。
 研究室で蚊を飼育する際、動物を吸血させることで卵を産ませます。この時、これまで吸血させていた動物と異なる種の動物を蚊へ与えると、最初は吸血成功率が低下するものの、世代を重ねるにつれて徐々に吸血活動が亢進する現象が知られています。そこで、通常はマウスを用いて飼育しているネッタイシマカ(Aedes aegypti)に、馬・ウサギ・ニワトリ・コモンマーモセットなどを新たな吸血源として与え、継代維持しました。それらのネッタイシマカ馴化系統の遺伝子発現変化を解析した結果、昆虫の神経系や嗅覚への寄与が予測される遺伝子の関与が示唆されました。この吸血宿主対象の短期馴化現象を紐解くことで、蚊の吸血宿主選好性やその可塑性の分子基盤を解明できると考えています。
(写真:JRA競走馬総合研究所における吸血実験の様子)