• TOP
  • 研究内容
  • vDNAを介した病原体媒介蚊とRNAウイルスの相互関係の解明

研究内容

vDNAを介した病原体媒介蚊とRNAウイルスの相互関係の解明

蚊やマダニなどの吸血性節足動物によって媒介されるウイルス(アルボウイルス)は、世界中に広く分布し、多くの感染者を生み出しています。蚊がアルボウイルスの媒介者となる要因として、蚊自身がアルボウイルスに感染しても症状を起こさず、持続感染となることが挙げられます。蚊は、RNAウイルスに対する様々な免疫系を備えていますが、体内からウイルスを完全に排除することはありません。
 主要なアルボウイルスを含む1本鎖RNA(+)ウイルスは、RNAのみをゲノムとして持つとされていました。近年、アルボウイルスに感染した蚊の細胞内において、アルボウイルスのRNAゲノムを鋳型としたDNA(vDNA)が産生されることが報告されました。このvDNAは、節足動物の細胞内で宿主のゲノムとは独立した環状形態をとること、ネッタイシマカゲノム中のpiRNAクラスター内に挿入されたアルボウイルス様配列からpiRNAを産生していること、piRNAがRNA干渉によりウイルスの増殖を抑制することが示されています。
 私たちは、vDNAをpiRNAクラスターに人為的に挿入することでウイルス媒介能力を減弱させた蚊の作出を試みています。ネッタイシマカとFlock house virus(FHV)をアルボウイルス感染症のモデルとして用い、遺伝子組み換え技術であるCRISPR/Cas9法によりネッタイシマカゲノムのpiRNAクラスターへFHVに由来するvDNAを挿入すると、vDNAに由来するpiRNAが産生されて、体内におけるFHVの増殖を抑制すると考えられます。この手法を応用することで、アルボウイルスの媒介能力を減弱させた蚊を作出し、アルボウイルス流行地における感染症制御法となることが期待されます。