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病原体媒介節足動物におけるトレランス機構の解明

 世界で年間100-150万人の死者を出す感染症のマラリアは、蚊の一種であるハマダラカによってヒトに運ばれるマラリア原虫が原因です。蚊が血を吸う時にその唾液を通して、ヒトの体内にマラリア原虫が侵入します。マラリア原虫は肝臓、次いで赤血球内に移動し、赤血球への侵入を繰り返しながら増殖します。一方、マラリア感染者の血を吸った蚊は、マラリア原虫を体内に“飼う”ようになります。蚊とヒトを舞台にした循環が、マラリア流行の基本的な仕組みです。
 人間や蚊などの感染防御応答は、大きく2種類の異なる性質に分類されます。一つは、病原体を積極的に排除するための「レジスタンス」、もう一方は、宿主に与えられる病原体によるダメージを制御するための「トレランス(耐性)」といわれるものです。従来の免疫学・感染症学では、前者に重点が置かれていましたたが、様々な感染応答において、いわば“がまん”の仕組みであるトレランスが存在することが最近になってわかってきました。マラリア原虫をもった蚊における健康状態は、レジスタンスとトレランスの協調作用により決められると考えられ、蚊自身が病状を示さない状況にトレランスが強く貢献していると予想されていました。私達は、ストレス応答性キナーゼあるp38が、この病原体感染に対する節足動物のトレランスを正に制御していることを世界で初めて発見することに成功しました。この知見は、p38の機能を抑制することにより、マラリア原虫を保持することが不可能な蚊(=“共倒れ状態”)を作りだす道を開くもの
として注目しています。

研究代表者
嘉糠 洋陸 かぬか ひろたか
東京慈恵会医科大学 医学部 熱帯医学講座・教授
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1973年、山梨県に生まれる。1997年東京大学農学部獣医学科卒業。2001年大阪大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士(三浦正幸・岡野栄之両博士に師事)。理化学研究所・基礎科学特別研究員、スタンフォード大学・日本学術振興会海外特別研究員、東京大学大学院薬学系研究科・講師を経て、2005年より帯広畜産大学原虫病研究センター・教授。2011年6月より東京慈恵会医科大学熱帯医学講座・教授。

《主要論文》Cell Host Microbe 6(3): 244-252 (2009), Cell 126: 583-596 (2006), EMBO J 24: 3793-3806 (2005), Proc Natl Acad Sci USA 100: 11723-11728 (2003), Nat Cell Biol 4:705-710 (2002), Mol Cell 4(5): 757-769 (1999), Proc Natl Acad Sci USA 96(1): 145-150 (1999)

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